トレイルランナーのための自然教室

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トレイルランナーのための自然教室
2014年5月17日(土)にトレイルランナーのための自然教室に行ってきた。
ブログに書くためにちょこちょこまとめていたのだが、うまくまとまらない。
そんなこんなしているうちに「TrailRunning2014(ベースボール・マガジン社)」で「自然を知り、親しむことの大切さ」として上原伸一さんが書いてくれていた。
とても良い記事なので(上記、雑誌は本当によい記事が満載です)詳細はこちらを見ていただくとして、僕なりの感想を書き留めておきたいと思う。

まず初めに

自然の野山を走るトレイルランニングの大会は「自然保護」と言われてコースが変更されたり、開催されなくなったりすることがある。
この「自然保護」という言葉は、例えるなれば「水戸黄門の印籠」。
「自然保護」という大義名分を出せば、議論も進まなくなる。
科学的に検証するにはお金も時間もかかるし、明確な結果がでるかも不明。

そんな印籠の元、僕はこう思っていた。
「例え植物を踏んでも、再生するのじゃないの?」
「過保護なんじゃない?」
「自分たちのフィールドに来てほしくないから言ってるんじゃない?」

今回のトレイルランナーの為の自然教室を経て、僕の考えは恥ずかしいくらい表面的であることがよく分かった。

今回の勉強会は

<トレイルランナーのための自然教室>と銘打って2日開催された。
主催はULTRA-TRAIL Mt.FUJI の実行委員会事務局であるNPO法人富士トレイルランナーズ倶楽部。
内容は以下の通り。

●5月17日(土)
 「使えば壊れる自然、自然界の復元力」 講師:富士山自然学校 渡辺長敬氏
 レースで2000名を超える選手が走った後、どのような影響があったのか?
 どのように復元してくのか?自然界の素晴らしい復元力を見てみませんか?

●5月18日(日)
 野鳥の観察会 (講師) 菅 常雄氏
 野鳥の繁殖期にあたる5月、私たちにとっても気持ちのいい季節は野鳥たちにとっても気持ちのいい季節。
 珍しい野鳥にであえるかもしれません。

今回の講師は

17日の講師は「渡辺 長敬氏」。
「チョウケイさん」と呼ばれていたので、そう読むのだと思っていたら、正しくは「のぶよし」さんとお呼びする。

プロフィールにはこうある。

1943年横須賀市生まれ、鳴沢村在住
富士山自然学校(株)代表取締役
環境省希少野生動植物種保存推進員
環境省自然公園指導員
山梨植物研究会理事
山梨県緑のインストラクター
富士山北麓環境ネットワーク代表
植物研究家
GOZAN自然学校理事(長野県)
富士学会会員

みてお分かりのように、富士山の環境に関するご意見番。
UTMFのコース選定にも大きく関わっているお方である。

18日の講師は「菅 常雄」氏。

日本野鳥の会 東富士支部長。
NPO法人 富士山の森を守るホシガラスの会 理事。

お二方とも肩書だけみると、どんなえらい人が・・・と思うのだけど(実際エライのですが)見かけはおじちゃん。ココロは子供(失礼)。

周りが暗くなるまで植物や鳥を追い続け、
家に帰ってもあの先はどうなっているんだろうというワクワク、ウキウキがとどまることを知らないというような、お二方。
会って、話して、一緒に自然を見ているうちに、両先生方とも、本当にキラキラとした子供のようなまなざしで、話すたびにこちらの心まで浄化されるようなそんなお二方である。

言葉で書くと薄っぺらいけど「心の底から富士山の自然を心から愛しているんだなぁ」ということを実感した。

スタッフの方は「チョウケイ先生は初めは怖かったんですよ」と言っていた。
上記のようなお方であれば富士山の大自然を2千人ものトレイルランナーが走るということは反対してしかりである。
「でも、チョウケイ先生はここはだめだけど、ここならいいよと言ってくれるんです」とも言っていた。

そうやって実現したUTMF。

菅先生は探鳥会の終わりこう言ってくれた。
「僕たち野●の会も反対するばかりでなく、前向きに話し合うようにしていくべきなんですよね。
そして、参加したメンバーにはこんなメッセージをくれた。
「こういった取り組みや活動はどんどん人に伝えていってください」
「一人でも多くの人が関心を持ってくれると、それは自然保護につながります」
「そして、こういった企画に参加することはUTMFを開催に導くための重要なボランティアの一つであると思います」と。

僕はたくさんのトレイルランナーにこういった勉強会に出て欲しい思う。

UTMFが開催された富士山とは

・富士山は日本の中央に位置する。
・標高の高い山(富士山)
・裾野の長い樹海
・きれいな水

ということもあり、日本の屈指の自然環境である。
ゆえに
・植生が多様
・日本固有の動物、植物も多い

そんなこともあり、日本野鳥の会は80年前(昭和9年)にここで誕生した。

動植物を観察する者にとっては、素晴らしい場所。
それが富士山なのである。

2日目の菅先生はこう言っていた「本当は山に入って欲しくないんです」。
いろんな話を聞いて、感じた後、確かにそう感じるだろうなという思いになった。

トレイルランナーが入って何が良くないのか(その1)

2014年4月25日(金)〜27日(日)3日間で行われる日本最大級のトレイルランニングの大会UTMF。
桜が咲き、鳥がさえずり、新緑が生える。

この美しい鳥のさえずり。
これは、求愛のさえずりなのだ。

求愛活動を終えると、鳥たちは繁殖に備えるため、巣作りを始める。

UTMFはそんな巣作りの一歩手前のぎりぎりのタイミングで開催される。

ご存じだろうか。
鳥の巣の半数以上が地面付近で作られることを。
最後の感想で、多くの方がこれを話題に出していたことからも
知らなかった人が多いと思われる。

地面を人が走ると振動が発生する。
振動が発生すると、地面に置かれた巣にいる鳥たちが驚く。
巣作りを放棄する鳥たちも出てくる。

2千人以上が走るUTMF。
その影響は軽微ではない。

それを避ける、ぎりぎりのタイミングでUTMFは開催された。
それはたまたまそうなったわけではない。
チョウケイ先生や菅先生のような富士山の自然を知り尽くした人たちと意見を交換し「ここならOK」と設定された日程である。

これより1週間後にずれると、富士山の大自然で生息する動植物に影響を与えてしまう。

トレイルランナーが入って何が良くないのか(その2)

チョウケイ先生から、さまざまな植物について教わった。
絶滅危惧種がごく普通のトレイルのわきに生えていることを知った。
大人数が山に入って、トレイルを外れたり、寝転がったりするとこういった絶滅危惧種がなくなっていってしまうのだ。

そして、一番知らなかったこと。
「靴に種がついて、高地に持ち込まれることの危険性」を知った。

ブラックバスで例えると分かりやすい。
日本の川で生息していた魚は、ゲーム用に持ち込まれた外来魚ブラックバスによってその数を減らしている。
ゆえに、駆除したりと対策に追われる地域が存在する。

山でも同じ。
繁殖力のある外来種の種ががランナーの靴に引っ付いて、山の上に持ち込まれた場合。
日本の希少種が駆逐される可能性がある。
そして、それは現実にも起こっている問題である。

こんなのがあった世界遺産を守れ 富士山 進む外来種駆除

現実に駆除活動をしている自然団体もある。
そんな人たちからすると、UTMFでは外来種の種を持ち込む可能性が大幅に増えるわけだ。
当然、反対もするだろう。

勉強会の時にどなたがかが言っていた。
「海外のトレイルでは、入る前に靴をブラシで洗います」。
確かにそれはいい考えだ。

ぜひ、取り入れてほしい。

1日目・使えば壊れる自然、自然界の復元力

富士山自然学校(株)事務所(結いの駅 なるさわ駐車場)に9時30分に集合。
チョウケイ先生からUTMFの環境調査報告を聞く。
結果は「トレイルランナーは驚くほど上手に山を走っている」ということ。
チョウケイ先生
懸念していた、コース外の走行跡も見当たらなかったという。
使われていなかった道を大勢で走ったことで、地元の人には歩きやすくなったと歓迎されることもあったそうだ。

UTMFコースである、竜ヶ岳のふもとで自然観察をしに行った。
持ち物は20倍ルーペ。
そして、コースに入って進んだのは50m足らずであったが「こんなに短い間になんとまぁたくさんの驚きがあるもんだ」と目からうろこがボロボロと。

チョウケイ先生はたくさんの植物について教えてくれた。
残念ながらそのほとんどが覚えられなかったけど、遠くに行かなくても、標高の高いところに登らなくても、体力がなくても、誰でも山の自然を楽しむことができる。当然のことだけど、そんなことをしみじみ思った。
ルーペでかぎまわる

2日目・野鳥の観察会

2日目は野鳥の観察会。
2日目とあるけども、実は2日とも出たのは一般参加者では僕一人だった。

道の駅すばしりに集合し、歩いて富士山の周りの鳥を観察する。
植物との違いは止まってくれないこと。
鳥がいれば、そそくさと集まり望遠鏡をセットする。
「センダイムシクイ入りました!」。
つまりそれは、望遠鏡の視野に鳥が入ったということ。
いつまでもそこに居てくれないので、入れ替わりながら急いでファインダーを覗く。
トレイルランナーのための自然教室 2日目

「かわいい♪」

そこに写っているのは、毛並みもつややか、クリクリとした丸い目。

「これはハマるわ」

即座にそう思った。

その後も観察を重ね、シジュウカラ、イカル、カワラヒバ、キビタキ・・・オオルリと約20種類の鳥を見た。

山に行くとたくさんの鳥の声を聴く。
美しい求愛のさえずり。
年中聞かれる地鳴き。
巣に近づいた時に発する警戒音。
1匹の鳥でも様々な声を発することも知らなかった。

そして、地面に巣を作る鳥が半数以上にのぼり、驚くと巣を放棄することもある。
巣の素材も土嚢などに使われるナイロン素材などが混じり、土や蔦などに比べて軽いけども崩れやすい巣が出来上がる。

鳥の子供が成長すると木から降り地面で生活する。
天敵は蛇。
地面に下りた鳥の子供は、危険を経験しながら成長する。
かわいそうだからと人間が保護してはいけない。

もう、本当に知らないことだらけ。
本当に自分は山を「走っていただけ」であることがよく分かった。

そして、参加者(トレイルランナー)が思いのほか自然のことを知らないことを、菅先生も知ったようだ。
一緒に歩きながら、質問をしながら知見を深めていく姿を見て「ランナーってあながち悪い奴らじゃないなぁ」と思ってくれたような気がする。

最後に菅先生は「僕たちも反対するだけでなく前を向いて意見をできるように努力しないといけないんですよね」とおっしゃってくれたのは印象的だった。

最後に

今回の会を通じて、思ったのは
「やっぱりコミュニケーションなんだよ」ということ。

チョウケイ先生も初めは厳しい人だったけど、スタッフの情熱やトレイルランナーと触れ合う中で、UTMF開催に尽力してくれた。
菅先生も、こうしてふれあい、話し合うことで前を向いて考えないとね、といった言葉をくれた。

僕の参加しているチームOSJでは、数々のOSJ大会をクリエイトしている滝川さんがいる。
先日、大会開催の苦労について聞いたとき、「大切なのはコミュニケーションなんだよね」とおっしゃっていた。

日本は国土の約73%を山地が占め、先進国の中ではトップクラスの山国である。
そして、四季折々違った姿を見せてくれ、楽しみは尽きない。

自然保護団体も、ハイカーも登山家もトレイルランナーも、山や自然が好きという方向では皆同じ。
やっていることは違えども、尊敬しあい学び合えばたぶん理解しあえる。
そして、もっと楽しいことができるはず。

個人的にはもっとたくさんの人にこういった自然教室に出かけてもらいたい。
得られるものは、かなりあるはずだ。

[sankakuten]

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